日本でも始まったウェブアクセシビリティと ADA (Americans with Disability Act) との違い
日本でも始まった ウェブアクセシビリティの義務化
これまでGO RIDE では越境ECやアメリカでECサイトを運営する際に ADA (Americans with Disability Act) について解説をしてきました。
過去記事はこちら
アメリカ向け越境ECで気をつけておくべきポイント 関税、ADA、CCPA
今回日本でもウェブアクセシビリティについてスタートするということで2024年4月1日をもって 障害者差別解消法の改正内容が適用され民間企業における「合理的配慮」が義務づけられるようになりました。
これにより民間事業者のウェブサイト全般にアクセシビリティ対応が求められるようになります。
個人的にはネーミングの差別解消法という響きが上から目線な感じがして嫌いなのですが、それに対して Accessibilities という言葉は全員に平等なアクセスを提供するという点に基づいているように感じ取れます。
ではここからは今回の日本の法改正でどういう潮流になっていっているのか、またどういう対策が必要なのかをアメリカとの対比も含めて確認していきたいと思います。
私も実際にリーダーを使用してウェブを閲覧している視覚障害の方がリーダーを使用しているシーンを拝見してアクセシビリティのあり方、必要性というものを実感しました。 これからどんどん身近になってくるアクセシビリティについて確認していきましょう。
1. アクセシビリティとは何か
ウェブアクセシビリティとは、ウェブサイトが全てのユーザーにとってアクセス可能、意味を理解して利用可能な状態を指します。
代表的な例が視覚障害者の方がリーダーと言われる機器を使用して内容をアクセスし利用できる状態を指しますが、それ以外にも聴覚障害の方や高齢者など、どのような方でも問題なくウェブにアクセスし内容を理解し利用できる状態が理想的です。
所謂視覚障害者だけでなく、高齢で視力や聴力が低下している方も含めて全てのユーザーに対してアクセス可能な状況というのがウェブアクセスビリティの対象となります。
参考 引用元 ウェブアクセシビリティとは? 分かりやすくゼロから解説!
ここでは 政府広報オンラインのサイトからいくつかの例を取り上げてみましょう。
視覚障害者を対象とした(視力の弱い健常者を含む)例
1. 文字に色をつけるときや画像に文字を書き込むときに、文字の背景色とのコントラスト比を高くする。
2.キーボードだけで操作できるようにする。また、キーボードで操作した時、フォーカスしている部分を認識しやすいようにする。
聴覚障害者を対象にした例
1. 映像コンテンツには字幕をつける。
これらは一例ですが詳しくは デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」 に記載がされていますのでご確認ください。
2. なぜ アクセシビリティに注目が集まっているのか
日本でも 2024年4月1日に施行される「合理的配慮」 の義務化によって、ウェブサイトのアクセシビリティへの対応が必須になるわけではなく、今回の法改正では努力義務となっており法的な罰則が課されるわけではありません。
参考 内閣府
リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」
改正前 | 改正後 2024年4月1日以降 |
合理的配慮に努める | 合理的配慮配慮を行わなければならない |
努力義務 | 法的義務 |
アメリカでは明確に罰則、罰金(Caliofirnia では2024年2月現在 $4000 〜 )があり、ヨーロッパでも 2025年にはより踏み込んだ対応が
European Accessibility Act 2025
にて進んでいくと考えられており、個人も含めた訴訟件数が大幅な増加傾向にあることから
Website accessibility has been a part of the ADA since the early 2000s and related lawsuits have increased significantly in recent years. The website accessibility lawsuit forecast for 2023 is pointing at 4220 lawsuits – 185 more than the year before and almost twice as many as in 2018.
主要先進国では機会平等とよりinclusive (包括的)な社会の実現のために対応が進んでいくことが考えられ、日本もより踏み込んで対応していく可能性もあると考えています。
3. 日本、 アメリカ ADA 、ヨーロッパ European Accessibility Act 2025 との違い
アメリカ | ヨーロッパ | 日本 | |
罰則 | 有 $20000 - $75000 1回目の違反 | EAA2025 についてはまだ不明 | 無 努力義務 |
名称 | ADA (American with Disability Act) | EAA 2025 (European Accessibility Act) | 障害者差別解消法 |
EAA 2025 の罰則の内容はまだ不明ですが、現在GDPR の罰則が 最大 20 million ユーロ もしくは グローバル全体での売上の4% どちらか高い方が適用されていることを考えると、小さな金額にはならないのではないかというのが大方の予想のようです。
EAA 2025 については 2025年6月まで各企業は対応の猶予があるということなので今から対策を行っていく必要があります。
ECサイトも対象となっています。
参考 The European Accessibility Act: Empowering Inclusion in Digital Environments
4.合理的配慮とは
合理的配慮とは環境の整備 (ウェブサイトにおいては上記で例をあげているような 動画への字幕付けなど)を基礎として行っていることを前提に、それぞれの障害者の特定の状況に応じて講じられる対策、 例 ウェブ上でのテキスト入力によるECサイト購入が難しい場合に、電話でオペレーターが対応して注文を受け付けるなどです。
5.各企業の継続可能な運用体制の構築まで
企業が行うステップとしては主に4ステップあると考えています。
1.現在のウェブサイトの状況把握
2. アクセシビリティ対応および合理的配慮の対応と方針策定
3. ウェブにおける対策実施と代替アクセス方法の明示
4.定期的なアクセシビリティチェックと運用における課題の把握と対策を継続的に対応していく運用
日本国内も海外におけるアクセシビリティについても特にECサイトにおけるアクセシビリティのご相談があれば GO RIDE までお問い合わせください